それがたとえ夢だとしても

これ以上好きにならないなんて 言わないよ絶対

君の隣。(数ヶ月前の青キミレビューを引っ張ってきた)

青空の下、キミのとなり 2015.05.12 on SALE

 

フジテレビ系ドラマ「ようこそ、わが家へ」の主題歌で通算46枚目のシングル。初動枚数は前作45枚目のシングル「Sakura」を超えている。初回限定版・通常版の仕様は以下の通りである。

 

初回盤(CD+DVD 14面歌詞ブックレット封入)

  1. 青空の下、キミのとなり
  2. Dandelion 

通常版(CD)

  1. 青空の下、キミのとなり
  2. この手のひらに
  3. 何度だって
  4. 青空の下、キミのとなり(オリジナル・カラオケ)
  5. ウラアラトーク

 

表題曲+新曲3曲といういつものお決まりのパターン。しかし今回のCDがいつもと違うのは「ウラアラトーク」つまりシークレットトークが収録されている点だ。「言葉よりも大切なもの」「とまどいながら」「PIKA★★NCHI DOUBLE「WISH」「Love so sweet」「Beautiful days」のCDの通常版にこっそり(ではない時もあったが)収録されてきたシークレットトーク。新曲が発売するたびに収録時間を確認したファンの方も多いのではないだろうか。今回のシークレットトークは事前にファンから嵐への質問を募集、寄せられた10万件のなかから彼らが実際に答えるという形をとった。初回盤にはDVDが付き、MV+メイキングが収録されることとなった。前回の「Sakura」で不評だったナレーションはなくなり、今まで収録されてきたそのままの嵐が楽しめる映像となっている。(若干J Stormの販売戦略に乗せられている気がしなくもないが)初回盤・通常版のどちらを購入しても楽しめる、充実したものとなっている。

さて、ここからは一曲ずつ見ていこう。

 

1. 青空の下、キミのとなり

 表題曲でありフジテレビ系月9ドラマ「ようこそ、わが家へ」の主題歌。シリアスな場面を想像させるように暗めのイントロから5人のユニゾンに始まり、Aメロ・Bメロと続く。そこからサビへと向かうと印象は一変、ドラマの世界観を考えると明るすぎるくらいのメロディーが流れだす。このアンバランスさは何なのか。どんな意図なのか。これだけ聞くとドラマに合わせて作られた楽曲ではないのでは…と思ってしまうかもしれない。名前の知らないストーカーに家族が戦うドラマなのに、「キミのとなり」。普通に考えたらナンセンス。恐怖でしかない。しかし歌詞を見てみると、それだけではないことが浮かび上がってくる。

「名前の知らない他人の情報が視線返す」

 現代の人々の繋がり・情報の流れを端的に表している、そしてドラマの世界観にも一致する言葉。匿名化された情報が際限なく流れ出すネット・SNS。それは他人の情報が視線を返しているのであって、自分が見ているだけではなく「見られている」ということであって。情報をそれほど恐れて扱っていないかもしれない私たちをチクリと刺す言葉だと思う。

 「なんで狂おしいのに不安がって」

 この歌詞は『狂おしいほど「愛しているのに」不安がって』という意味ではないだろうか。ドラマの中で相葉演じる主人公含め家族たちは様々な人々をストーカーではないかと疑うことになり、その中で苦悩してゆく。その中には疑いたくない、いわゆる「愛している」人物だっているだろう。そうやって疑うことで「希望を忘れ」、「曇り空」のように先の見えない中で進んでいかなければならない。その疑い・不安が頂点に達したとき「帰る家はどこに?」となるのだ。ここは極めてドラマに密接に関係すると同時に、現代の人々の心に潜む闇を象徴していると言えるだろう。

 

 サビについて。サビには二重否定がこれでもかというほど使われている。あえて「ある」と言わず二重否定にした意図とは何なのか。そこにはメロディーに合わせただけ、ということはないと思う。そこで、先にサビの最後を見てみよう。

「見つけた光を辿って 君と君と つながっていたいんだ」

 つまり、Aメロ・Bメロの苦悩の答えがこのサビの最後の歌詞なのだ。疑って、不安になって、苦しんで、希望をなくして。それでも「光を見つけて 君と繋がっていたい」から前に進んでいくんだ、と。だから「ない」を多用して二重否定にする意味とは、疑いがないわけじゃないし、希望がないわけじゃない。でもそこに確実にあるものは何なのか分からない。本当にあるのかどうかも分からない__だから、二重否定。ここには深い意味が、そしてこの歌のすべてが込められているような、そんな気がするのだ。

 

2. Dandelion

 Dandelionとは、タンポポのことで、本来の意味はフランス語でライオンの牙。花言葉は「愛の信託」「信託」「真心の愛」「別離」「解きがたい謎」「思わせぶり」。歌詞から考えるとここでの意味は「別離」「思わせぶり」といったところだろう。曲はコーラスが上手く効いたイントロから始まり、Aメロの歌詞からは何かに疲れた主人公の顔が浮かぶ。「無理して過ごしたいわけじゃない」「器用に笑いたいね」という言葉から分かるように、何かが彼の中で引っかかっているのだ。それはBメロ、サビで明らかになる。「思い出そうとしても ボヤけてる笑顔」「独りよがりの夢でも」が象徴的だ。ぼやけてて掴めない、独りよがりで不確か。でも何にも終わってないんだ。「ねぇ、そうでしょ?」というのがタンポポで花占いをしているような「儚さ」「信託」を思わせる。

 2コーラス目のAメロ「キミとのディナーの話題も現実的なんだ」「言い訳じみた言葉」。ここで1コーラス目のAメロの答えが見えてくる。「無理して過ごしたいわけじゃない」だけど「キミとのディナーの話題も現実的なんだ」、つまり新鮮さ・ロマンティックな雰囲気がないんだ、ということ。だから「器用に笑って」いたいけど彼女の笑顔は「ボヤけてる」、つまり最近は笑顔をみていないということになるのではないだろうか。「苦しくて悔しい日常飲み干して この目で確かめるしかない」のサビから分かるように、彼はこの状況を打破したい。「ここから始まるでしょ?」と信じたい。そんな現実に立ち向かいたい、立ち向かおうともがく歌なのではないかと思う。

 この曲で注目すべきなのは歌割りが大野→二宮→相葉→櫻井、大サビの一部が松本だということ。これはカップリングではなかなか見られないように思われる。コーラスが効いた短いイントロからほとんど間を開けず、大野の伸びやかな声を突っ込んでくるのがニクい、と個人的には思う。歌詞もメロディーも今までとは違う、大人のステップを一段上がった彼らをぜひコンサートで見てみたい。

 

3. この手のひらに

 場面は付き合っていた二人が別れたあと、彼が昔を思い出しているところ。二人で叶えたことを並べて「っていう理想ばっか信じてさ」。二人で叶えたかったことを並べて「っていう理想ばっか並べてさ」。この曲は「キミが笑えるように」(Single GUTS! c/w)のエッセンスを感じる。すべてを繋ぐものは「この手のひらに」ある…そんな切ない話。「キミが笑えるように」では過去の綺麗な思い出を力にして前へ歩いていく歌であるの対し、「この手のひらに」ではまだ過去の思い出にしがみついている。しかし今までの歌のような「狂おしいほど」過去にしがみついてるのではない。どこか冷めているように、自分のことではない、遠い昔のことのように歌っているこれも彼らが大人になった象徴だろう。

 歌割に関して言うならば、注目すべき点は二宮のパートだろうか。2コーラス目に入り相葉→松本→櫻井→二宮と流れていく。次々と理想やあの頃の気持ちを並べていき、二宮が「っていう理想ばっか信じてさ」と現実に戻す。これを冷めた目で現実を見つめ、自分だけの底を持って生きている彼が歌うことでこの歌の悲しさ・儚さが強調されるように感じられるのだ。さらに言うならば、二宮のフレーズの前を歌う櫻井に彼のソロ曲「suger and salt」を思い出してしまってジンとくる。

 

4. 何度だって

 このCDの中で一番彼ららしい曲のように思われる。作詞作曲がyouth caseさんということもあり、やはりさすがで。歌詞は韻を踏んでいるものが多く、リズムのいい曲に歌詞がいっそう拍車をかけ疾走感溢れる歌となっている。注目すべき歌詞は「大人になることと引き換えに 諦めることだって覚えてきた」だろうか。彼らの場合「大人になることと引き換えに」というよりは「アイドルとして生きる」ことと引き換えに「自分を犠牲にすることを」覚えてきた、という風に解釈してしまいそうだが。サビの「何が大切かってもがいてるけど」「あのころ口ずさんだ夢があるんだ」というように、夢のためにもがいていく姿は彼らに重ねてしまうと何かこみ上げるものがある。

  思い出すのは10周年のときのメンバーそれぞれの告白。そして15周年のハワイでの対談、告白。彼らは悩んでもがいて、無我夢中で。何度も挑戦して、きっと夢をかなえたこともあっただろう。その裏には倍の失敗があり、得た分失ったものもあったはず。明るいメロディーの裏にそれを思い出させてくれる、素敵な曲だ。これもぜひ実際にコンサートで聴いてみたいと思う。