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それがたとえ夢だとしても

これ以上好きにならないなんて 言わないよ絶対

美しく儚い孤独な暗殺者

 
美しく 儚い 孤独な暗殺者__蝉。
 
すべてが楽しみだった。伊坂幸太郎原作の『グラスホッパー』が映画化。主演・生田斗真で殺し屋たちを描く。そして「山田涼介 孤高の若きナイフ使いの殺し屋【蝉】を演じる」との報道。もともと斗真の演技が好きだから主演として名が挙げられたときにはもう観に行こうと決めていたけれど、山田さんの名が出たときには本当に嬉しかった。
 
ただただ蝉について語ります。内容はないです。
 
※映画の内容やDVD・Blu-rayの特典映像などについても触れますが ご了承ください…!
 

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背筋がぞくっとするような気味の悪い雰囲気と残酷な現実を突きつけられる鈴木を中心に繰り広げられる物語を楽しみつつも、蝉はまだか、まだ出てこないのかとそわそわしていた時に彼は現れた。

 

「俺はてめぇら殺りにきただけだ」

 

カンカンカンカン…と虫が蛍光灯に群がり落ちる音、そして羽音。気持ち悪くなるような音を鋭い金属音で遮ったのは__蝉。映画館でこの映像が目に入った瞬間、息が止まるように苦しくなった。あぁ、蝉だ。暗殺することでしか生を感じられない孤独な若き暗殺者・蝉がそこにいる。映画館に来る時まで純粋なストーリーと「山田涼介が演じる蝉」が見たいと思っていたのに、「山田涼介」の文字なんて頭から消えてしまっていた。様々な色のペンキで汚されたように見える蛍光黄色のシャツの上から乱雑にレインコートを着て、躊躇なく建物の中に入り階段を上がってゆく。乗り込んだ場所の男たちと比べると明らかに小さな体。無駄のない身のこなし、躊躇なく突き立てるナイフ。初日に観たとき、まるで舞台の上で華麗に踊っているようにさえ見えた。こんなこと言ったら不謹慎なのはわかっているけれど、血を浴びる蝉がこの上なく美しくて 虫のように、はたまた何かに憑りつかれたように狂いつつも冷静な瞳をのぞかせる彼に色々な意味で魅了されてしまって。これが撮影はじめで、映画初出演の初カットなんでしょう?監督がネットニュースやインタビュー・パンフレットで絶賛してくださっていたように、すごいものを見てしまったと思った。

 

蝉は生々しいから怖い。あんなに目は冷え切ってるのに、薄暗い建物の中蛍光灯に照らされた肌は汗がにじんでいる。背筋が凍るような怖さって言うよりは生そのものの怖さを感じる。酔いしれる隙があるというか。生を探し続けて暗殺者として生きている蝉は、本当はとても人間らしい。生に対する認識が曖昧というか、よくわかっていない部分はあったとしても彼自身から「生」は感じられた。それに対して鯨は生を感じない。静かにそこに佇んでいる鯨は暗殺をする際(自らの手は汚さないけれど)情を持っているように思えるし、その結果が幻聴なのだとは思う。でも、すべてが静かで背筋が凍るような冷たさを感じさせるから私自身彼に対してはあまり「生」を意識することはできなかった。だからこそ、タイプも容姿も全く異なる二人がぶつかるあのクライマックスシーンは素晴らしくて…。

 

今さらながら、思いだしたあの言葉。「同世代の役者で蝉役をやりたい人はいっぱいいる」ファンから根強い人気を誇る原作だ、伊坂さんの他作品が映像化されてることもあって読んだ人ならば一度はきっと想像しただろう。実写化したら誰がやるんだろう、どんな風になるんだろうと。まさか山田涼介がこの役をやると思っていた人はほとんどいないんじゃないかと思うけれど。彼を抜擢してくれた監督・スタッフさんには感謝しかありません。

 

DVDとBlu‐rayが発売するにあたって、録画していたWSを観直してみた。斗真が笑顔でちょっぴりふざけた口調で「この映画は涼介にかかってる」と言う(正しく言えばそういう内容のメールを送った)。いくら鈴木・鯨・蝉の3人の物語とは言えども主演は生田斗真。それにも関わらず、WSや雑誌のインタビューでかなり推されているのがわかる。その理由は、オーディオコメンタリーで監督と脚本家さん、そして斗真が蝉のシーンを語るのを聞いたときに分かったような気がした。

青島さん「(蝉が出てくる最初のシーンについて)軽やかに、こういう殺し屋がいるっていう不思議な新鮮さで…山田くんでよかったなって」

監督「最高の映画で最大の発見をしたというか」

青島さん「なんか淋しさみたいなものというかね、山田くんがやってくれて…そういう台詞はひとつもないんだけど」

監督「それだけでなぜ彼はナイフ使いの殺し屋になったのかっていう説明をする必要がないよね」

青島さん「(中略)役をがーっと膨らませてくれたなって思います」

※これらはオーディオコメンタリーで語られたものを文字起こししたもののため微妙に表現や言葉が異なる場合があります

 

監督は彼の演技を見てしみじみと「この撮影のときそっか…ハタチだったのか…」と言い、脚本の青島さんは蝉が血まみれになるシーンについて楽しそうに饒舌に語ったりする。斗真は俺もやりたかった、と言わんばかりに熱を持って語る。担当だから、フィルターがかかっているのはわかる。だけどそれ抜きで考えても…蝉は、蝉を演じた山田涼介という俳優は演技で爪痕を残し、それゆえに制作陣にとても愛されていたような気がした。

 

長々と思ったことを書いてしまいましたが。ただただ銀幕で活躍する俳優・山田涼介に夢中になったこの作品で、日本映画批評家大賞 新人男優賞を受賞されたことが本当に嬉しくてたまらないです。銀幕デビュー作(撮影が先だったからこちらを銀幕デビュー作というのか、それとも公開が先の『暗殺教室』をデビュー作と言うのかは微妙なのですが)のこの作品が山田涼介の名前と共に賞として歴史に刻み込まれる。とにかく嬉しいし、誇りです。初めて蝉を観た時の感動も、賞を受賞したという一報を受けた時の喜びをきっとこの先も思い出すんだろうなと思います。

 

山田さん、受賞おめでとう。

素敵な作品を届けてくれてありがとう。

これからもあなたが活躍することを願っています。

 

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