それがたとえ夢だとしても

これ以上好きにならないなんて 言わないよ絶対

8月16日、すべてのはじまり。

 

 今日は、私にとってとても大事な日です。今まで振り返ったこともあまりなかったけれど、とても大切ですべての始まりで、きっと一生忘れることのない一日です。

 

 8年前の今日、2008年8月16日。私は初めて『魔王』というドラマを観ました。母親が放送開始前から「今度このドラマ観るんだ、面白そうだし楽しみ」と新聞記事を見せながら私に言っていたことを昨日のことのように思い出します。その頃は20時に就寝させられるという何とも厳しい家庭でリアルタイムで一緒にみることはかなわなかったですし、サスペンスやミステリーものは好きではあったけれど「録画して観る」という思考にはなりませんでした。だから毎週土曜日にリアタイした母親にあらすじを聞くというのが恒例になっていました。

 

 そんなある日、母親が「本当に面白いから録画して観てみなよ」と言ってきました。あらすじを聞くだけでも盛り上がっていたので、さぞ面白いドラマなのだろうとワクワクしながら録画をしました。それが2008年8月15日放送の回。その日も20時に就寝し、次の日の午前中に母親と一緒に録画を再生しました。本当に笑えてしまうほど、その状況が目に焼き付いて離れない。それだけ衝撃的だったということでしょうか。

 

 その回は、『魔王』というドラマにとっても大きな意味を持つ回でした。表では「弱気を助け強きを挫く」天使の弁護士と称えられる弁護士だが、その裏の顔は弟を殺された復讐に燃えている大野さん演じる成瀬領。彼は自ら手を下すことなくターゲットである関係者を次々と葬っていく。そんな中、成瀬領とその親友真中友雄に関する奇妙な証言を得た新聞記者の池畑が成瀬領の秘密を暴くために動き出す。成瀬さんはその動きを食い止めることには成功したが、実は彼はもうすでに手を打っていた。そのせいで優香さん演じる成瀬さんの姉もその騒動に巻き込まれていく…簡単に言うとそんな話でした。

 

 オープニングの鬼の肖像ののちに映る静かな狂気に満ちた大野さんの表情。復讐心の象徴とも言える赤い部屋。不敵な笑み。どれもどれも、見たことのある大野さんじゃなかった。歌番組でしか彼のことは知らなかったからそう思うのも当然でしょう。カーンという何かを叩く高い音ののちに流れ始める怪しい音楽がその違和感を増強させる。

 

とんでもない人に出会ってしまったと思った。とんでもないものを観てしまったと思った。復讐心という冷たい炎を心の中に絶えず燃やしてきた成瀬領というこの人は、どうしてこうも美しいのだろう。そしていつかその炎に自らも飲み込まれてしまうのではと思うほどどうしてこんなにも儚いのだろう。前回までのあらすじ、というように流れてくる映像だけで心を奪われてしまった。

 

 そして『魔王』というドラマのロゴが出てきて、そこには一匹の美しい蝶が羽ばたいている。流れてくる主題歌は嵐の「truth」。衝撃的だった。この前うたばんで見た、楽しそうにカラパンをはきながら歩く嵐じゃなかった。メロディーも歌詞も彼らのイメージからはかけ離れていて信じられなかった。何より、このあらすじを見ただけでもわかる複雑で悲しい感情やストーリーを表現する歌というものがあるということにただひたすら圧倒された。「悲しみ…」「たとえどんな終わりを描いても心は謎めいて」どう考えてもアイドルが歌う歌じゃない。

 

 結論を先に申し上げると、私はこの放送を見て大野さんのことを好きになりました。そしてその流れですんなりと嵐というグループを好きになりました。特別な何かはありません。大野さんを好きになると言うことは嵐を好きになるということだ、それが当たり前だと思っていたし好きにならない理由なんて見つからなかった。ただそれだけです。

 

 どうして大野さんを好きになったのか。きっと、それはこの回でドラマを、演じる大野さんを初めて観たからというのもあると思います。この回で成瀬さんは何通りもの顔を見せます。自分のことを嗅ぎまわっている、それも弟が殺された事件で記事のねつ造を行った記者である池畑への顔。大切な大切な姉へ見せる顔。触った物に残っている映像を見ることができる能力をもち事件解決のために協力する、行きつけのカフェの店員であるしおりさんに見せる顔。現役の刑事で弟を殺した張本人である、斗真演じる芹沢直人に向ける顔…など。見たことのない顔がいっぱい見れたからこそ、一瞬にして大野さんに惹かれていったのだろうと思います。

 

 この回で、成瀬さんは姉である真紀子さんをお見舞いに行きます。彼女の前では本物の天使のような表情を見せます。優しくて温かくて紳士で。成瀬さんが一番安心する、一番幸せな瞬間だったのだと思います。だからこそ、そんな日がもう来なくなってしまうとなったときの表情は苦しくて苦しくて…天使からその心を殺し復讐に突き進んでいくターニングポイント、それがこの回でした。小学校5年生だった私がどの程度理解できていたのかはわかりません。でもそこから8年経った今も絶対に忘れられない、大切な大切な一話です。

 

 これを観てからすぐ、嵐のCDやテレビ誌を買いに行きました。澤野弘之さんが担当したサントラに触れました。嵐のバラエティ番組や24時間テレビを見て、彼らの魅力をたくさん知りました。次のクールで放送されるから、という理由で流星の絆の原作を読んでいままで大嫌いだった読書が好きになりました。いいことも悪いこともあるかもしれないけれど、全部突き詰めればすべてあのおかげ。感謝してもしきれないです。

 

 話が本筋から逸れましたが、今日から9年目になります。ジャニーズが好きだということが恥ずかしくて隠していた小学生の自分へ、耐えてくれてありがとう。大好きで仕方なかったけどまだ大きな声で言うのは恥ずかしくて曲が流れても冷静なふりをしていた中学生の自分へ、何年後かの自分への手紙で今好きな曲を書いたような気がするんだけどきっと未来も変わっていないと思うよ。大っぴらに嵐が好きだと言い始めてそのつながりで友人の輪が増えていった高校時代の自分へ、相変わらず好きでいてくれてありがとう。今の自分へ、置いていかれないように頑張ってね。

 

 いつのまにか二宮担になり、彼らを応援していて嬉しいことも大変なことも色々あったけれど、たくさんの幸せを喜びを笑顔を教えてくれてありがとう。これからもついていかせてください。個人的な記念日だけど、どうしても記しておきたくて。本当にありがとう。これからもずっと、ずっと応援させてください。

 

 

 彼らと出会えたこの季節が、思いを馳せる夏が、毎年やってきますように。