それがたとえ夢だとしても

これ以上好きにならないなんて 言わないよ絶対

エンドロール

 

黒い背景に白い文字。応援しているグループの彼が主演として、名前が誰よりも先に映し出される。様々な経験と苦悩を抱え、それでも作品のため観てくれる皆のため、スタッフキャストそして自分のため、無我夢中で取り組んだであろう彼。白く綴られた彼の名前は誇らしく、そして涙を誘うものだった。…軽率にも。しかし、それと同じくらい震えずにはいられない瞬間があったのだ。

 

__原作『ピンクとグレー』 加藤シゲアキ

 

出演者のように画面いっぱいに大きく映し出されるわけでもないし、それだけが映っている時間があるわけではない。下から上へと名前は流れていく。それでも、それでも。その名を見つけた時、自分の中で何かが弾けた。

 

幼い子供のように、誰かに怒られたときのように、負けて悔しい思いを抱え我慢ならなかったときのように…泣いた。嗚咽が抑えられなかった。そのとき頭に浮かんだのは、彼の名前と…あるインタビューだった。

 

某アイドル誌に掲載された彼の一万字インタビュー。彼が所属するグループが直面していた問題、小説のこと。その二つが中心となって話が進められていく。詳しいことは実際に文章を読んでほしい。彼の言葉じゃないと伝わらないことがたくさんあると思うから。

 

話はエンドロールに戻る。エンドロールで彼の名前を見た瞬間、何かが弾け想いが溢れるのを止めることができなかった。次々と思いだされる彼の言葉。

 

「メンバーにおんぶだっこだなって」「自分はグループのために何もできてない」「自分がもっと何かできていたら」「去っていく背中が忘れられない」

 

順風満帆なんて無縁だったであろう。数々の困難と焦燥感、苦しみ、悲しさ、悔しさ。そんな中で、そんな自分を打破したくて「死ぬんじゃないかってくらい頑張って書いた」彼の小説。それが、後輩が主演というかたちで映画化された。こんなこと言ったら彼に笑われるだろうし、簡単に言うなと怒られるだろうけれど言わせてください。

 

あそこで踏み出した一歩があなたを変える一歩だったんだね。あなたが好きな結果論かもしれないけれど。一番見たかった景色はこうではないし、もうそれは二度と実現することはないとしても…あなたの想いは違った形で蕾となり、花開いた。それはあなたが所属するNEWSという木に皆の目を向けるきっかけとなり、その木も合わせるように生長した。

 

その花が落とした種が、今回の映画化。映画は原作者の物じゃない。原作者はただの原作者だ。ずっと言い続けていたよね。その通りだと思う…けれど、でも。たかが原作者、されど原作者でしょ、シゲさん。あなたが思い描いた景色の断片はそこにあったでしょ。後輩が背負い、キャストが思いを繋いでくれたでしょう。全部全部、あなたが踏み出したその一歩が、すべての始まりだったんだよ。辛い現実がそうさせたものでも、あなたがいろんな人の道を作ったんだよ。

 

・・・そんなことを思ったら嬉しくて、少し悲しくて、それでもやはりうれしくて涙が止まらなかった。あのシゲが。あの人が。辛かった時代を私は共に経験していないけれど。勝手に嬉しがって報われた気になって泣いてる自分は偽善者と言われても仕方ないのかもしれないけれど。

 

・・・誇らしかったよ、シゲさん。

 

原作者として、『ピンクとグレー』の公開おめでとう。

傘蟻のドラマ化おめでとう。

主題歌・出演・原作の担当おめでとう。

スピンオフの小説の掲載おめでとう。

 

たくさんのおめでとうをあなたに届けたい。努力の人、加藤シゲアキに。